INSTALLATION
星と月
〜中国の10の星、目をそらすと月〜
GU A.K.A TETSUSHI TOMITA SOLO EXHIBITION
SHIN-SAPPORO GALLERY
JUN 16 - JUN 21
2010
タイトルの星と月は、無数の星の中から光り輝くポップスターを意味しますが、その意図は、逆に闇に隠れている部分をあぶり出すことです。白黒のモノクロームは過去の出来事を表すためではなく、ニュースなどのマスコミュニケーションが本質的に持っている「過去性」を強調し、リアリティを取り除くためです。またウェブ配信された映像をコンバートして白黒のモニターで表示するのも同じ理由によります。それはある意味では私たちの欲望の裏返しとも言えるのです。「私たちは知りたいことしか知らない」のです。ブロードキャスティングは多くの人が知りたい事に偏りがちです。視聴率に支えられるこの世界では、マイノリティーへの報道は切り捨てられる傾向にあります。
この展覧会を通してメディアの持つ光と影を浮かび上がらせ、私達が複雑にシステム化されたメディアといかに向き合い、読み解くべきかを意識するきっかけにしたいと考えています。
「Chinese 10 stars」
外部のシステムは、自己を拡張し生きようとする個とぶつかり合いが生じます。この世界では、私達は孤独で、極めて脆く移ろいやすい存在に見えます。そこで必要になるのがイコンの存在です。この作品群は中国のメディアが報じた20世紀の10人のポップスターの画像と、ウェブで集めた彼らの10の格言です。
情報のグローバル化によって、彼らは世界中のどこでも魅力的で、美しい存在として認知されています。彼らの鮮やかな個の主張は、私達の欲望を写し出す鏡として、大衆の幻想をリフレクトしていると考えます。そんなポップアイコンを極度にフラット化した手法で描きました。ここにはもう一人アインシュタインを加えています。また、近代から現代へのてがかりとして、毎日報道されるニュースから、現代日本の首相と元首相の姿を会期中に描きました。
「The Moon is There」
この作品群は、月に墜落していく衛星かぐやの視点で描かれたものです。JAXAが公開しているこの画像を見て、激しく心が揺さぶられました。これらの絵はナラティブな連作であると同時に、私とこの衛星を重ね合わせ、没入して描かれています。遠く果てしない距離で起こった出来事を手元に引き寄せようとするこのような「擬人化」行為が起こりえるのは、グローバルの名の下に不気味に拡張した人間の「視覚」の偏りを表していると考えます。
私達が行き着く最後の場所として、8枚目の創作の「闇」を描き加えています。
「leak」
アメリカの南部に位置するGULF OF MEXICOで大規模な原油の流出事故が起こりました。委託元の石油メジャーのHPでは、海底1600mの漏出現場から、作業ロボットの映像が公開されています。80年代の白黒テレビで、40分に及ぶウェブで公開されている映像を放映することによって、マスメディアにおけるニュース報道の偏り、知識とはなにかという意識を喚起する意図があります。現在米政府は、賠償責任を追求する構えですが、一企業の責任の範囲を遥かに超えて、原油は現在でも漏れ続けており(2010年7月現在)、環境への影響が懸念されています。
企画:NPO h.i.p-a
協力 Art Exposure & Total Design
TOPへ戻る> |