映像インスタレーション
『SEKKA 雪華』

日時:2012年12月31日(月)〜2013年3月中旬終了予定 毎日PM5時オープン
会場:ICE BAR in 星野リゾートトマムアイスビレッジ





 アイスビレッジは冬期間にのみ登場する雪と氷でできた村です。そのドームの真っ白な氷をスクリーンにして映像インスタレーションをを展開しています。そこでココアや日本酒などのドリンクを用意しています。僕の中で雪は「偏在と遍在」というテーマがあります。雪はどこにでもあるものだが、それをクローズアップしてよく見てみると、その結晶の一つ一つの形はほんとうに多様です。「どこにでもあるようでどこにでもないもの」というわけです。僕としては最近このように身近なものをもう一度見つめ直すことが、いい未来につながるんじゃないかと思っています。下に長々と書いていますが、割と雪の結晶を調べるとけっこう面白いんです。そのきっかけを与えてくれたのが、北大の中村先生でした。雪の結晶のレプリカづくりができる「氷のラボ」というプロジェクトをビレッジ内で開催しています。夜しかやっていないのですが、お近くにお寄りの際は是非ご覧下さい。

 雪華とは雪の結晶のことを指しています。江戸末期の蘭学者土井利位(どいとしつら)は、数ミリの雪の結晶を初めて顕微鏡で観察し、私家版「雪華図説」を記しました。この図本に描かれた雪の模様は、江戸のファッション界で大ブームを引き起こします。「華」と題している通り、筆と墨のシンプルな線で描かれたシェイプは、時に植物のようであり、単なる図鑑を超えて、日本の自然観や感性を垣間みることができます。科学的に言うと、結晶は六角形を基に形作られる最密充填の法則性を持っています。雪は北海道のどこでも見ることができます。けれども、数えきれないほど降り積もる結晶の一つ一つが、全て違う形を成していると想像するとなんとも楽しくなってくるのです。
 雪華の映像は、この図説から100種ほどを写したものですが、どのシーンを切り取っても同じ形がありません。常に変化し移り変わっていきます。最後にあらわれるセンテンス「我が衣手に雪は降りつつ」は、百人一首にも登場する和歌です。自然の持つ普遍性は、何にも代え難く私たちを包むものであり、その一瞬を切り取る和歌の感性もまた美しいと感じます。江戸と現代、自然とテクノロジー、時間や空間、白と黒、図と地、さまざまな境界を超えて人と人が繋がり、連環していく場を想像しながら制作しました。

  
雪華図説の一部(左)豊国の描いた百人一首15番(右)

昨年公開した作品「水のたわむれ」も同時公開中です。




Diretor/Visual
冨田哲司 Tetsushi Tomita

Sound
佐々木恒平 Kohei Sasaki (mot/c)

トマムアイスビレッジ
http://www.snowtomamu.jp/winter/snow/village.php

主催  星野リゾートトマム  共催 ウィンターサーカス  協力 シーニックバイウェイ北海道



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