札幌国際芸術祭2017
「コタンペップロジェクト」
国際芸術祭の一プログラムとして企画とコーディネートしました。
一言でいうと、
『コタンペップロジェクトは、円山の「いま・むかし・みらい」を五感で楽しむアートプロジェクトです。』
ということなんですが、補足すると国際芸術祭2017では札幌のまちを読み解いていくプログラムが多数ありました。その一環として、都市に近接する原始林を擁する稀有な地勢に着目し、またその地をまるごと体感するようなプログラムをと考え、毎日体験できるデイリープログラムと、芸術祭会期中に不定期で開催するイベントで構成した参加型のプロジェクトです。また多くの方々にご協力いただきました。ここで改めて感謝申し上げます。
写真:札幌市公文書館蔵
円山はアイヌ語でモイワ、山麓の一部は「コタンペッ」(コタン=村、ペッ=川)と呼ばれ、札幌開拓の祖と言われる島義勇もここから未来の札幌を構想したと言われています。円山扇状地は、かつてアイヌの人々の営みがあり、鮭が多く遡上した琴似川に合流する伏流水や「メム(湧水)」など、豊かで複雑な水系に涵養され、多くの樹種を擁する天然記念物である貴重な原始林に育まれてきました。本プロジェクトでは、大都市と自然が近接する円山に着目し、自然と人が共に歩んできた円山の環境、歴史、文化のさまざまな結びつきをひもとき、急速な都市化の中で、失い、見えなくなってしまったものごとを再発見します。未来を思考し、円山をまるごと体験する創造的なコタン(村)が札幌国際芸術祭2017に出現します。(空間デザイン建築家・五十嵐淳)
本プロジェクトの会場となる円山公園は、豊かな自然環境というだけでなく、北海道神宮の鎮守の森に隣接し、人の手による試験林でもありました。古くから行楽地として親しまれ、長く札幌市民に見守られ愛されてきました。今回、「クチャ*」をモチーフとした構築物をきっかけに、訪れる鑑賞者自身が居場所をしつらえることにより、常に風景が変化するコタンが形成されます。
また、円山エリア一帯をフィールドに「大風呂敷プロジェクト」など札幌国際芸術祭2017の他企画とも連携しながら、「食」「遊び」など親子で楽しめる身近なテーマから、かつてこの地で暮らしたアイヌの人々の空間性や、目ではとらえられない思想や世界観そのものを掘り下げる参加型ワークショップやツアー、トークプログラムを予定しています。旅人と市民が出会う憩いの広場として、また人工物(都市)と自然、そこに介在する人との共生について思考する「きづき」の場となることを意図しています。
*クチャ(アイヌの漁撈、採集の際の仮小屋)
アイヌの人たちは漁撈、採集の際、クチャと呼ばれる仮小屋をつくり、寝とまりしていました。クチャには用途や形状、材料によって、いつくかの種類があります。また、材料はその場で手に入れやすいものを使用するため、季節や地域により異なります。他の人のクチャを使うときは、事前に許可を得て使い、利用した薪や食料を後でもどしておきました。
(財団法人アイヌ文化機構・研究推進機構 文献より)
デイリープログラム
会期:8月6日(日) 〜 10月1日(日) オープン 10:00〜16:30(貸出16:00まで)
休館日なし 参加無料
円山公園パークセンターにてパラソルとテント貸出して会場のおもいおもいの場所にテントを張って、かつてあった円山の環境に思いを馳せながら、思い思いの時間を過ごしてもらおうといういう企画です。空間デザインは建築家の五十嵐淳氏。大風呂敷プロジェクトと協働でオリジナルのテント幕を準備しました。
オープニング
ひろがれコタンワークショップ#01 めちゃクチャOPENING
8月6日(日) 10:00~15:00 SIAF2017オープン
ゲスト:山道 陽輪 堀江 純子(一般財団法人アイヌ民族博物館 学芸課)
白老のアイヌ民族博物館の学芸課のお二人に来ていただき、コタンペッの語源でもある狩をフューチャーして、仮小屋を建てたり、狩を摸したアイヌの遊びをしてみたり、知識だけではなく、体を使って楽しもうというワークショップ企画です。堀江さんからは植物利用という観点からふきを縒って作った紐や狩の道具などを紹介していただき、山道さんのクチャを建てるナイフさばきや結び方など、二人の手際の良さにほれぼれしてしまいました。参加者も一緒にプロセスを楽しみました。後半はけん玉、輪投げ、狩りを模した親子で楽しめるアイヌの遊び体験も開催しました。
協力:一般財団法人アイヌ民族博物館、さっぽろ冒険遊びの会、建築学生同盟北海道組
五十嵐淳、上遠野敏、マユンキキと歩くコタンペッ再発見ツアー
8月12日(土) 前半10:00~15:00 後半16:00~18:00
ゲスト:五十嵐 淳(建築家) 、上遠野 敏(札幌市立大学教授)、マユンキキ(アイヌ文化アドバイザー)
会場:円山公園入口→円山八十八カ所登山→円山公園木道→メイン会場(交流会)
札幌の開祖である島義勇が、札幌の町を構想したのは、「コタンぺッの丘」と言われた円山山麓だと言われています。また、円山登山道は貴重な植生を擁する原始林の中にあります。前半は、 豊かな自然とともに、豊かな文化的背景を持つ円山のおすすめの場所や魅力を、空間デザインを担当した五十嵐淳氏、芸術祭の企画メンバーの上遠野敏氏に紹介してもらい、アイヌ文化アドバイザーでもあるマユンキキ氏にまゆんさんにアイヌ語のレクチャーをしていただきました。紹介してもらい、一緒におしゃべりしながら、エクスカーションを楽しみました。あいにくの雨となりましたが、五十嵐さんからは、今回の空間デザインのコンセプト、マユンキキさんからは円山に自生する植生や、円山神宮に隣接する円山の神事にまつわる話も興味深いものでした。
協力:アイヌ文化財団
見えないものを見てみよう! コタンペッちゃクチャバーチャルツアー
8月20日(日)10:00〜12:00
ゲスト:谷本晃久(北海道大学 文学研究科 日本史学講座 アイヌ・先住民研究センター准教授)
開拓前夜、今も円山公園を流れる円山川は、かつて「ヨコシぺッ(えものをねらう川)」と呼ばれ、 一帯はエゾシカやエゾオオカミ、ヒグマが徘徊する深い森でした。また、「コトニ川」周辺には多くのコタンがあり、遡上した鮭が見られたと言います。円山の原始林から発する水脈は、同時に扇状地に住むアイヌ の人々を育んでいました。現代社会では見えづらくなっている札幌の姿を、コタン(人のいとなみ)とペッ(水脈)を手がかりに、開拓前夜、現在、未来を想像の翼で旅をしながら、多様な切り口で思考する場となりました。山田秀三など記録に残る地名や由来から、北方四島や当時の樺太から大陸につながる山丹貿易など、近現代の社会とは違った世界とのつながりを知ることができました。
協力:特定非営利活動法人札幌オオドオリ大学
ひろがれコタンワークショップ#02 森で食ベる・話す・唄う
9月10日(日)10:00〜15:00
ゲスト:ゲスト:マユンキキ(アイヌ文化アドバイザー)、作田 悟(アイヌ植物ツアーガイド)
円山公園の原始林には多様な植物が自生しています。草木は食べ物であると同時に、家や道具の材料であり、毒や薬でもあります。本ワークショップは植物に着目し、アイヌの言葉や歌を楽しみながら植物の利用の方法をエクスカーションで学びます。文字を持たないアイヌの人々にとって、植物の知識は生きるために欠かせないものでした。物語には植物を題材にしたものも数多くあります。今回はアイヌのお二人をお招きして円山の森を一緒に楽しみました。後半では、参加者がオープニングで教えてもらったクチャを建てたり、狩の遊びをしたり、ムックリを奏でたり、盛りだくさんで楽しみました。マユンキキ氏おすすめ図書や、アイヌ関係書籍を集めた青空文庫もオープンしました。
協力:建築学生同盟北海道組、さっぽろ冒険遊びの会、特定非営利活動法人札幌オオドオリ大学
写真6点:Yoshisato Komaki
ひろひろがれコタンワークショップ#03 さいごもめちゃクチャ CLOSING(SIAF2017クローズ)
10月1日(日)
これまでのツアーの集大成としてクロージングイベントを開催。円山の歴史、植生、アイヌ文化をテーマにみんなでわいわい話をしながら、片道40分程度の円山登山をしました。アイヌの遊び体験。青空文庫もオープン。最後には円山に見られたホタルをイメージしたライトアップで会期を終えました。
その他コラボレーションイベントとして、アウトリーチで出かけました。一部をご紹介します。本プロジェクトに多大な協力をいただいたアイヌ文化財団、一般財団法人アイヌ民族博物館、地方独立行政法人北海道立総合研究機構、この円山で一緒に場を作ってくださった建築学生同盟北海道組のみなさま、冒険遊びの会のみなさま、大風呂敷プロジェクトのみなさま、そしてSIAFボランティアのみなさま改めて感謝申し上げます。
冒険遊びの会でもクチャが登場
クロージングのモエレ沼の大風呂敷にも。
大通りのホコテンでもアイヌの遊び体験をコーディネート。マユンキキ氏もゲストで来ていただきました。
コーディネーター:冨田哲司
協力:特定非営利活動法人札幌オオドオリ大学
主催
札幌国芸術祭実行委員会、札幌市
助成
平成29年度 文化庁 芸術創造活用プラットフォーム形成事
一般財団法人地域創造、ニトリ北海道応援基金 損保ジャパン日本興亜「SOMPOアート・ファンド」(企業メセナ協議会 2021 Arts Fund)
共催
公益財団法人札幌市公園緑化協会
協力(名称順)
アイヌ文化財団
一般財団法人アイヌ民族博物館
建築学生同盟北海道組
さっぽろ冒険遊びの会
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
特定非営利活動法人札幌オオドオリ大学
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