なにげなくジップをかけ違えたことから始まりました。
服に使用されているジッパーは様々な規格が存在し、つながったり、つながらなかったりします。世界には、言語、人種、宗教、ヒエラルキー、政治信条などから生じるさまざまな制約、言い換えれば不可視の境界線が存在します。「ZIP UPジップアップ」という言葉は、日本でも「口にチャック」という言いまわしがあるように、口をふさぐこと、沈黙を象徴する言葉です。しかし、人が互い沈黙し、静止している世界が、大きな力で揺さぶられたとき、助け合えるのが「他人」だと信じています。
服をジッパーでつなげていくだけの、とるに足らないアクションが、各々が持つ境界を超え、他者とどこまでも繋がることができるという可能性を呼び起こす鍵となります。
それが、「世界はシームレスに繋がることができる」という大いなる物語へのささやかな回答であり、つたない証明であると考えます。
Project Director ,Artist Tetsushi Tomita 冨田哲司